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Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.32
2016年8月29日発行
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目次

2.4 ポート別使用量

次に、トラフィックの内訳をポート別の使用量から見ていきます。最近では、ポート番号からアプリケーションを特定することは困難です。P2P系アプリケーションには、双方が動的ポートを使うものが多く、また、多くのクライアント・サーバ型アプリケーションが、ファイアウォールを回避するため、HTTPが使う80番ポートを利用します。大雑把に分けると、双方が1024番以上の動的ポートを使っていればP2P系のアプリケーションの可能性が高く、片方が1024番未満のいわゆるウェルノウンポートを使っていれば、クライアント・サーバ型のアプリケーションの可能性が高いと言えます。そこで、TCP とUDPで、ソースとデスティネーションのポート番号の小さい方を取り、ポート番号別の使用量を見てみます。また、全体トラフィックは、ヘビーユーザのトラフィックに支配されているので、一般利用者の動向を見るために、少し荒っぽいですが、1日のアップロード量が100MB未満のユーザを抜き出して、これをライトユーザとします。これは、図-4では、IN=100MBにある水平線の下側の利用者にあたり、概ねモバイル利用者の使用量に相当します。

表-3 ブロードバンド利用者のポート別使用量

表-3はブロードバンド利用者のポート使用割合を、全体とライトユーザについて、2015年と2016年で比較したものです。2016年の全体トラフィックの83%はTCPです。HTTPの80番ポートの割合が、2015年の38%から37%に減って、HTTPSの443番ポートの割合が、23%から31%に増えています。減少傾向のTCPの動的ポートは、2015年の18%から2016年には14%にまで減りました。動的ポートでの個別のポート番号の割合は僅かで、Flash Playerが利用する1935番が最大で総量の約2%ありますが、後は0.5%未満となっています。TCP以外のトラフィックでは、UDPでもHTTPSの443番ポートのトラフィックがあり、GoogleのQUICプロトコルだと思われます。他はほとんどVPN関連です。

一方、ライトユーザに限ると、2015年には53%を占めていた80番ポートが、2016年には49%へと4ポイント減少しました。一方で、2番目に多いHTTPSの443番ポートが、2015年の35%から40%へと5ポイント増えていて、HTTPの一部がHTTPSに移行したと考えられます。また、動的ポートの割合は、5%から3%に減少しています。

表-4 モバイル利用者のポート別使用量

表-4はモバイル利用者のポート使用割合で、全体的にブロードバンドのライトユーザの数字に近い値となっています。HTTPSの利用拡大については、2013年6月に米国家安全保障局(NSA)の通信傍受プログラムの存在が問題になって以降、暗号化通信を行うHTTPSを常時使用するサービスが米国を中心に増えてきているためです。2016年のHTTPSを利用するトラフィック量について事業者別内訳を調べると、その約7割はGoogle社関連で、同社の積極的なHTTPS採用の取り組みが窺えると同時に、YouTubeのトラフィック量がHTTPSの利用量を押し上げていると思われます。

図-8は、ブロードバンド全体トラフィックにおけるTCPポート利用の週間推移を、2015年と2016年で比較したものです。ここでは、TCPのポート利用を80番、443番、その他のウェルノウンポート、動的ポートの4つに分けてそれぞれの推移を示しており、ピーク時の総トラフィック量を1として正規化して表しています。2015年と比較すると、全体でも443番ポートの割合が更に増え、動的ポートの利用が減少している傾向が確認できます。全体のピークは21:00から翌1:00、土日には昼間のトラフィックが増加していて、家庭での利用時間を反映しています。今回、水曜の午前に80番ポートのトラフィック増加が見られますが、これはマイクロソフトの自動更新プログラムの影響だと思われます。図-9のモバイルでは、トラフィックの大半を占める80番ポートと443番ポートについて推移を示します。ブロードバンドに比べると、朝から夜中までトラフィックの高い状態が続きます。平日には、朝の通勤時間、昼休み、夕方から夜中にかけての3つのピークがあり、ブロードバンドとは利用時間の違いがあることが分かります。

図-8 ブロードバンド利用者のTCPポート利用の週間推移
2015年(上)と2016年(下)

図-9 モバイル利用者のTCPポート利用の週間推移
2015年(上)と2016年(下)

2. ブロードバンドトラフィックレポート

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